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口腔内スキャナーとは?従来の歯型取りと何が違う?メリット・デメリットを解説

口腔内スキャナーとは?従来の歯型取りと何が違う?メリット・デメリットを解説

2025/02/17 ブログ

こんにちは。愛媛県松山市のもりもと歯科クリニック院長の森本です。当院の「金属アレルギー・掌蹠膿疱症専門歯科医療サイト」をご覧いただきありがとうございます。

今回は、2024年6月から一部保険適用になった「口腔内スキャナー」について解説します。近年、歯科医療の分野で急速に普及している「口腔内スキャナー」。歯の型取りが楽になると言われていますが、実際にどのようなものかご存知ですか?

ここでは口腔内スキャナーの仕組みや、従来の歯型取りと比べてどのような違いがあるか、メリット・デメリットなどについて説明します。

口腔内スキャナーとは?

口腔内スキャナー(Intraoral Scanner)とは、口の中を専用の小型カメラでスキャンし、歯や歯列の形状を3Dデジタル画像として記録する機器です。

松山 もりもと歯科|ブログ|口腔内スキャナーとは?従来の歯型取りと何が違う?メリット・デメリットを解説|口腔内スキャナーのイメージ画像

口腔内スキャナーのイメージ画像

 

従来は歯型を採るために「印象材」と呼ばれる、アルジネートやシリコーンゴム素材の、粘土のような材料を使っていました。これだと素材が固まるまで口を開けて待たなければいけませんが、口腔内スキャナーを使用することで、より快適に型取りができるようになりました。

光学カメラでスキャン

口腔内スキャナーは、高解像度の光学カメラを搭載しており、歯や歯茎の形状を精密に撮影します。スキャナーを歯にかざして動かすと3Dデータが生成されます。

デジタルデータの処理

スキャンしたデータは専用のソフトウェアで処理され、歯の形や噛み合わせの情報を360度再現します。モニターで、その場で確認できる点も特徴です。

CAD/CAMシステムとの連携

得られたデータは、コンピュータ上で補綴物(被せ物、詰め物)の設計に利用され、その後、セラミックなどの材料を削り出すミリングマシンや3Dプリンターで補綴物が作られます。

口腔内スキャナーのメリットとデメリット

メリット

◆歯型を取る必要がない

従来の型取りでは、印象材を口に入れて定着するまで待つ必要があり、患者様によっては嘔吐反射(えずくこと)もありましたが、口腔内スキャナーは光を当てるので辛くなく、短時間で終了します。

◆レントゲンやCTのように放射線を使用しない

口腔内スキャナーは小型カメラで口の中を撮影するため、放射線を使用しません。そのため被曝の心配がありません。

◆口腔内の情報をデジタルで保存・共有できる

データは簡単に保存・転送できるため、歯科医院と歯科技工所における情報共有がスムーズになります。そのまま補綴の設計や製作に利用できるため、補綴完了までの時間が短縮されます。

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口腔内スキャナー使用場面のイメージ画像

 

デメリット

◆保険適用は一定条件を満たした場合のみ

2024年6月から、CAD/CAMインレー(詰め物)を製作する場合に限り、口腔内スキャナーの利用が保険適用になりました。一歩前進ではありますが、保険適用にならないケースの方がまだまだ多いです。

◆導入コストが高く、技術習得に時間がかかる

口腔内スキャナーは高価な機器のため、導入している歯科医院はまだ限られています。全歯科医師が使い慣れているものではなく、効果的に使うには、ある程度習得に時間を要します。

◆口腔内の状態により、適応できない場合もある

歯の本数が少ない方や、歯並びが複雑で特殊な方、進行した虫歯や歯肉の内部深くまで精密に確認する必要がある場合は、口腔内スキャナーより従来の方法の方が適していることもあります。

松山 もりもと歯科|ブログ|口腔内スキャナーとは?従来の歯型取りと何が違う?メリット・デメリットを解説|歯の型取りをした模型のイメージ画像

型取りした模型のイメージ画像

 

口腔内スキャナーを利用した補綴物の製作は3パターン

口腔内スキャナーでお口の中の状態を確認した後、実際、どのようにして補綴物を製作するかは、さまざまなパターンが考えられ、それぞれにメリット・デメリットがあります。

1.口腔内スキャナーでデータを取り込み、そのまま最終補綴物を作る

口腔内スキャナーで歯の形状をスキャンし、取得したデータからCAD/CAMソフトウェアで補綴物を設計。セラミックなどを削り出して実際に作成し、調整、装着します。

最もスピーディーで、即時治療が可能な場合もあります。しかし、模型での最終確認ができないため、装着時に細かい調整が必要になることがあります。以下の2と3に比べて精度も劣ります。

2.口腔内スキャナーのデータから3Dプリンターで模型を作り、それをもとに調整

口腔内スキャナーで歯をスキャンし、取得したデータをもとにCAD/CMAソフトで補綴物の設計。3Dプリンターで模型化したものを使って、最終補綴物を微調整し、仕上げ、装着します。

模型で物理的に確認できるため、1と比べて適合精度が向上します。

3.口腔内スキャナーと従来の型取りを併用

口腔内スキャナーでデータを取得し、同時に従来通り印象材を使って型取りも行います。両方を比較しながら模型を作成し・調整し、最終補綴物の作成、装着へと移行します。

現状では最も精度が高く、適合しないなどのトラブルも少ないですが、2つの方法を併用するので手間とコストがかかります。

上記の1〜3を比べると、精度が高い補綴物を作るには「2」が理想的ですが、3Dプリンターを使用するため自費診療になり、コストがかかるのが難点といったところです。

松山 もりもと歯科|ブログ|口腔内スキャナーとは?従来の歯型取りと何が違う?メリット・デメリットを解説|笑顔の歯科衛生士のイメージ画像

口腔内スキャナー、従来の型取り、結局どっちがいい?

口腔内スキャナーは、保険適用で使用する場合インレー(詰め物)のみ対象である、歯と歯の隙間や歯同士が接触する部分の確認・調整が難しい、そのため適合が劣る可能性がある、などの理由から、これまで通り、型取りで模型を作って補綴物を製作した方が、適合が良いのが現状です。

ただ、冒頭でもお伝えしたように、従来の型取りは「印象材(アルジネートやシリコーンゴム素材の材料)」を口に入れ、固まるまで何分か待たなければいけません。独特の匂いや感触がどうしても苦手、「おぇっ!」とえずいてしまい、なかなか型取りができない、という方には口腔内スキャナーのほうが良いかもしれません。

これから口腔内スキャナーの技術が進歩し、スキャナーの精度や、取得データから作る補綴物の完成度がさらに上がれば、安心して幅広いケースで活用できると思います。

参考
令和6年度歯科診療報酬改定の主なポイント(2頁目)|厚生労働省保険局医療課
令和6年度歯科診療報酬改定の概要【歯科】(158頁目)|厚生労働省保険局医療課