歯科に使われている金属と各金属のアレルギーの陽性率
2021/06/03 ブログ
こんにちは。愛媛県松山市のもりもと歯科クリニック院長の森本です。
当院の「金属アレルギー・掌蹠膿疱症専門歯科医療サイト」をご覧いただきありがとうございます。
本日は歯科に使われている金属とアレルギーの陽性率についてお話ししていきます。
歯科で使用される金属と金属アレルギー
歯科に使われている銀歯、さし歯、入れ歯には様々な金属が使われています。
金属には溶けやすい(イオン化しやすい)金属、溶けにくい(イオン化しにくい)金属があり、溶けやすい金属はアレルギーを起こす可能性が高くなります。
なぜ溶けやすい金属と溶けにくい金属があるかは、学生の時に化学で習った方もおられるかと思いますが、イオン化傾向の違い(金属の溶けやすさ)が関係してきます。
口の中には色々な金属が入っている可能性があり、異種の金属が入っていることで電池の仕組みができているので、電流(ガルバニック電流)が流れる環境になっています。
化学的な反応により口の中の金属は溶けやすく(イオン化しやすく)また溶けた金属が吸収され、アレルギーを起こす仕組みができてしまいます。
歯科に使われている金属と陽性率
それでは、どのような金属が金属アレルギーを起こしやすいのでしょうか。
日本口腔検査学会雑誌の「歯科用金属アレルギーの動向 : 過去10 年間に広島大学
病院歯科でパッチテストを行った患者データの解析」の各種金属のアレルギー陽性率のデータを紹介しながらご説明していきます。
まずは、各金属元素の陽性率 のグラフです。
グラフから、ニッケルやパラジウムの陽性率が高いことが分かります。
歯科で使われる金属の説明と陽性率
それでは、歯科で使われる金属の種類や歯科以外でどのようなものに含まれているかなど、金属ごとに陽性率も交えながらご説明します。
1.ニッケル
歯科で使用される金属の中でも、最も金属アレルギーを起こしやすいのがニッケルです。
イオン化傾向も高く、アレルギーの陽性率は約18.9%です。
ピアスや指輪、ベルトのバックル、化粧品などにも含まれています。
またチョコレート、大豆、紅茶などの食品にも含まれているので、ニッケルにアレルギーがある方は大量に摂取するのは控えた方がいいでしょう。
歯科では矯正のワイヤー等、歯科治療で使われる材料の中に含まれています。
2.クロム(三価クロム)
クロム(三価クロム)のアレルギーの陽性率は高く、約13.2%です。
ステンレス、時計の皮バンドなどの革製品に含まれています。
歯科ではコバルトクロム合金として、入れ歯の一部、矯正用のワイヤーに使用されています。
(グラフに六価クロムがありますが、人体に有害であるため、三価クロムへ置き換えられています)
3.コバルト
コバルトの金属アレルギーの陽性率は約10.5%
ピアスや指輪、化粧品に含まれています。
歯科ではコバルトは、入れ歯などに使用されています。
4.銀
銀はイオン化傾向が低い金属で、アレルギーを起こしにくい金属です。
アレルギーの陽性率は約1.0%と他の金属と比べると金属アレルギーが起こる確率は低いといえます。
歯科では銀歯に多く使用されています。神経がない歯の土台(コア)として使用されたりします。
5.銅
銅の金属アレルギー陽性率は約3.4%。
歯科では銀歯の約20%程度に銅が含まれています。
6.インジウム、イリジウム
インジウム、イリジウムは、歯科治療でよく使用されている金属です。
銀歯(1%)や金歯などにも含まれています。
金属アレルギー陽性率はそれぞれ、インジウム約3.0%、イリジウム約13.2%と、イリジウムが高い値となっています。
7.パラジウム
歯科では銀歯の約20%にパラジウムが含まれています。
近年EUを中心に、歯科治療でパラジウムを使用すること自体が問題視されています。
ドイツでは小児、妊婦に対して歯科治療でパラジウム合金、銅、アマルガムを使用しないように勧告しています。
しかし、日本の歯科治療では現在必須の材料です。
パラジウムは金属アレルギーを起こしやすい金属で、陽性率は約16.6%とニッケルに次いで高い値です。
8.金
金はイオン化傾向が低く溶けにくい金属ですが、溶けるとアレルギーを起こしやすい金属の一つです。
金属アレルギーの陽性率は約5.1%。
歯科治療では金歯や銀歯の中に含まれています。
9.チタン
チタンは、歯科ではインプラントに使用されています。
安全な金属と言われていますが、近年アレルギーが報告されています。
数値としても金属アレルギー陽性率は約6.4%です。
インプラントなどを入れる前に、心配な方は金属アレルギー検査を行った方が安全でしょう。
歯科金属による金属アレルギーの症状について
歯科において、虫歯治療で使われる銀歯や詰め物などのいわゆる歯科金属が原因で、手足や全身にアレルギー症状が現れることがあります。
歯科金属による金属アレルギーでは、金属そのものではなく、口腔内の歯科金属から溶け出した金属イオンが体内に吸収され、血液の循環によって全身に回ることで、様々な部位に症状が出ることがあります。
口内炎や歯肉炎、舌炎などに加え、口の周りや背中、手や足など、全身の皮膚の湿疹などの炎症が主な症状です。
もりもと歯科クリニックでは、歯科金属によるアレルギーについて、下記のページで詳しくご説明しています。どうぞご参照ください。
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